なんでもかんでもはむり

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今週の事々(2018/10/08~14)

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ラッパーたちはロック・ミュージシャンと同じような人たちじゃなくて、基本的にお笑い芸人みたいなものだと思ったほうが、彼らの魅力がわかりやすいと思います。お笑い芸人って平気で女性蔑視的なことを言ったり、俺はこんなに稼いだんだという話をしてるけど、それはそれで頭がいい奴らだっていうことですから。(中略)ただそれが自己表現というんじゃなくて、どちらかというとその場を盛り上げるとか、ウケたいという気持ちが先にある。長谷川町蔵・大和田俊之『文化系のためのヒップホップ入門 2』、アルテスパブリッシング、2018)

奇しくも今週、両者を代表する存在の「奇行」によって両者の共通点が浮き彫りになってしまった。ため息が出るばかりである。

この場合、この二人を束ねている行動原理は上で引用した長谷川町蔵氏の発言から少し先に進んだところにある。そのような空気によって出来上がっているその場の「ルール」「空気」の逆を常に突いていくという「逆張り」の精神に則ってこの二人は行動しているのだ。「だってみんなと違ったほうがおもろいやん?」ということだ。

あとふたりとも現政権の指導者とご飯を食べている。

アメリカではカニエに対して色んな人がかなりの熱量で怒りを表現しているのに対し、日本での松本人志バッシングがそこまでの注目を集めていないのはこの国の「お笑い信仰」の強固さの表れである。カニエについてはもはや「あいつの言うことをまともにとらえちゃだめだ」というスタンスが多いのに対し、松本人志の発言については「言い方はひどいが、一定の真理がある」なんて調子。

そこまで信仰を強固にしたという点については間違いなく当時ダウンタウンというお笑い芸人が持っていた才能という部分が大きいと思うし、そこに異を挟み込む余地はないのだけれど、その後何十年もその地位に「権威」として居座っている状況は不健全としか言いようがない。こんな考えの持ち主がテレビというエンターテイメント空間を支配していて、その空気感というのがAbemaやAmazonなどのネット空間にも侵食してきているのだからもうやってらんない。

更にタチが悪いのがそういう空気感はテレビを通して我々の日常生活にも多大な影響を与えているということだ。だから普段の飲み会などでも我々はこういった「弱い者いじめ」「セクハラ」「パワハラ」というルールに則った「おもしろ」によって迫害されるのだ。個人的に今週行った飲み会がそういう雰囲気をまとっていて非常に嫌な思いをした。こういうものを拒むのが「おもしろくない」のであればぼくは面白くなくて一向に構わない。「おもしろ」を棄教する。

世の中のこういう雰囲気が一刻も早くなくなりますように。って、他力本願でもいけないんだけど。

↓最後に今週触れた作品のリスト↓

<音楽>

Booker T. & The MG's『The Very Best Of Booker T. & The MG's』(2007)

Claude Thornhill Orchestra『The Real Birth Of The Cool』(1973)

The Coasters『The Very Best Of』(2007)

Common Sense『Ressurection』(1994)

Cornelius『Ripple Waves』(2018)

CREAM『Sounds Good』(2018)

Denise LaSalle『Trapped by a Thing Called Love』(1972)

Ed Motta『Criterion Of The Senses』(2018)

Kero Kero Bonito『Time 'n' Place』(2018)

Kevin Abstract『American Boyfriend: A Suburban Love Story』(2016)

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BROCKHAMPTONの中心人物の一人であるKevin Abstractのソロ作。2016年発表。「ボーイフレンドは親に合わせてくれない、僕の肌の色を怖がるかもって」。ゲイであること、黒人であることの苦悩が、アート・ロック寄りのサウンドに乗せて歌われる。この曲の中で「Well, we all love Young Thug」という歌詞があって気になったのだが、Young Thugってジェンダーレスなファッションで知られるのね。不勉強で知らなかった。めちゃくちゃクールだ。

Kurt Vile『Bottle It In』(2018)

Javier Santiago『Phoenix』(2018)

LUCKY TAPES『dressing』(2018)

Lupe Fiasco『DROGAS WAVE』(2018)

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24曲98分という大作ながら、これといったテーマがあるわけでもなく(本人はツイッターで説明を試みていたが、どうもしっくりこない)、聴き流す感じのアルバムになってしまっているが、曲は全部それなりに格好いいというなんだか不思議なアルバム。リリックもわかりやすくコンシャスで、特に2013年に6ヶ月で銃撃で亡くなったJonylah Watkinsという女の子についての曲「Jonylah Forever」では「もし彼女が生きていたら」というストーリーで非常に感動的であると同時に怒りを禁じ得ない。

mabanua『Blurred』(2018)

Macy GrayRuby』(2018)

N.S.P.『N.S.P. III ひとやすみ』(1974)

The O'my's『Tomorrow』(2018)

Quavo『QUAVO HUNCHO』(2018)

Reason『There You Have It』(2018)

Robert Wyatt『Rock Bottom』(1974)

THE STAR CLUB『PUNK!PUNK!PUNK!』(1985)

quickly, quickly『Over Skies - EP』(2018)

Twenty One Pilots『Trench』(2018)

Ugly Duckling『Journey to Anywhere』(2001)

WILYWNKA『SACULA』(2018)

YOUNG FREEZ『YOU.』(2018)

アンドレ & J Gryphin『WATER - EP』(2018)

スチャダラパー『WILD FANCY ALLIANCE』(1993)

世田谷ピンポンズ『喫茶品品』(2018)

チェン・ビー『歩いても歩いても』(2018)

森山直太朗『822』(2018)

6LACK『East Atlanta Love Letter』(2018)

<映画>

君の名前で僕を呼んで』(2017)

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間違いなく今年ベストのエンドロール。完璧すぎる。

東京物語』(1953)

<書籍>

中村とうよう『大衆音楽の真実』(1986)

大衆音楽の真実

大衆音楽の真実

 

 この本が出版された1985年当時、「毒にも薬にもならないような凡庸な音楽を定期的に与えられることに慣らされてしまった無感動な大衆(ほんとうの意味でのアノミー)に向けて、全然ハミダさない偽ポピュラー音楽が音楽産業内の生産システィムによって作られ、垂れ流されるような状況が、生まれて来ている」と彼は書いている。

今でも大勢は変化していないが、インターネットという新しい「周縁」によっていろんな「ハミダした」音楽が続々と溢れ出てきているというのは一種のターニングポイントとなっているように思えた。大衆音楽、万歳!