なんでもかんでもはむり

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今週の事々(2018/08/06~12)

  • SKY-HI『FREE TOKYO』

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avexというドが付くほどメジャーな会社から、無料配信のミクステを出すという行為にまず驚いた。これまでプライベート用のアカウントで曲をアップロードをしたりとかしていたけど、今回は完全にavexのチャンネルから。

肝心の中身も、かなりいい。最近のポップス寄りの曲は一切好きになれないでいたんだけど、こうやって時折ものすごくヒップ・ホップ色の強い作品を出してくるから完全に嫌いになれない。というかそこも含め戦略なんだろうけど。

客演陣も豪華。盟友SALU、「Story of J」をめぐる議論をTwitter上で繰り広げていたMoment Joon、若手注目株hideyoshi・Novel Core(旧:Core-boy。今回が彼にとってスタジオ録音された初のヴァースとなる)、韓国を代表するヒップホップレーベル・HI-LITE所属のラッパーReddyという面々。

SALUの超絶フロウとMomentの痛烈な皮肉が聞ける「Name Tag」ももちろん必聴なんだけど、個人的に注目したいのが「Dystopia」。

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「何も変わらないぜ / 人が死んだくらいじゃ / 何も変わらないぜ」という諦めから始まるこの曲が「I'm SKY-HI / たぶん何度死んだって変わらない」という力強い決意表明で締めくくられるという鮮やかさ。

そして「Story of J」の内容に関してネット上で議論になったことも「失敗したんなら謝る」と潔く宣言していたり、「日本国に普及『普通教』という名前のカルト / ああすれば蹴る / 焼き直しのラブソングならカルト / 俺もお前も片棒担いでると思うと嫌になるよ」と暗にAAAでの自身の活動にすら届いてしまうような自省もしていたりと、本当に抜け目ない。

ユリイカ』に載ってたインタビューでもものすごいいいことを言ってたので、これからの活動にものすごく期待してしまう。

  • 新曲・新ビデオ

アサキ『Moldy feat. ハシシ(電波少女)』

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術ノ穴の女性ラッパー/SSWの新曲。このレーベルにしては珍しいくらい(失礼)メジャーっぽい曲。でもめちゃくちゃ良い。ポストDAOKO枠、とくくってしまうのは早計だけれど、それくらいのポテンシャルがある。

欅坂46『Student Dance』

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こういうグループ・こういう曲に『時計仕掛けのオレンジ』と『雨に唄えば』を合わせたようなMVを作ってくるあたり、わかってる感がすごい。パンクスを標榜していたWACK勢(BiS、BiSHなど)が現在思いっきり商業主義に阿っている現状を考えると、こういう「レジスタンス」的なポジションを背負い続けているのはこのグループなのかもしれない。しかもAKBから続く日本で一番「メジャー」な位置で。曲もかっこいいし、何より金髪にした鈴本美愉がかっこよすぎる。

Silk City「Loud feat. GoldLink, Desiigner」

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Mark RonsonとDiploがタッグを組んでいたなんて。ハウス風、というか思いっきりハウスのトラックがかっこいいし、誰かが遠くで歌っているようなDesiignerのフックがなぜか異国情緒を醸し出す。不思議な一曲。

NEI「FAST CAR feat. KID FRESINO」

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「この速い車で / 駆け抜けてみたい」平易すぎるほどのラインだけど、新鮮に響く。C.O.S.A.やjjjが絶賛という触れ込みによる補正もあるかもしれないけど、この曲はめちゃくちゃよい。KID FRESINOがまたまた本気で主役を食いに来ててすさまじい。「Mason眠る今 / What's the purpose?」。

SEEDA vs 晋平太

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SEEDAがやりたいことはわかる。本場アメリカのように書いてきたリリックで、どぎついディスを半ば喋るようなスタイルでやる。でもそれにしてはディスがちゃちすぎたし(母親に対するディスは正直完全アウトだと思う、このご時世)、晋平太のフリースタイルのスキルを甘く見すぎていた。100-0で晋平太の勝ちだ。晋平太がかっこよすぎる。「韻踏んでスゲーこと言ってんの聞きてえっしょ」まさにその通り。

a.k.a. GAMI、RYKEY、DOGMA、MEGA-G、NIPPS「COVER UP」

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またまたタイアップもの。でも一切アングラ色を薄れさせてないのが(タイアップ相手の選択含め)うまいところ。漢が珍しくフロウで目立ってる。DOGMAも相変わらずフリーキーすぎる。

Kanye West「XTCY」

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突如公開された新曲。どうやらアルバムのアウトテイクらしい。でももともと『Ye』の前に作っていたアルバムを全部ボツにして『Ye』を発表したわけだから、こういうアウトテイクが今後続々と公開されてもおかしくない。余談だけど、Jimmy Kimmelの番組に出たカニエが「Pornhub見るよ」と発言したら永久会費無料権をもらったという話がサイコーすぎる。

Nicki Minaj「Sorry feat. Nas

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この曲のTracy Chapman「Baby Can I Hold You」サンプリングの許可が下りずアルバム『Queen』の発売が延期になったわけだけど、結局間に合わずアルバムには収録されず。でも翌日にこの曲が公開されたということはタッチの差だったわけで、惜しい。Nasのヴァースが「古き良き時代」を思わせる内容でよい。

↓最後に今週触れた作品のリスト↓

<音楽>

Baloji『137 Avenue Kaniama』(2018)

Bobby Sessions『RVLTN(Chapter 1): The Divided States of AmeriKKKa』(2018)

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きわめてスキルフル、そしてポリティカル。Def Jamから新しい才能がリリース。武器も持っていないのに複数回景観に打たれて亡くなったという彼のいとこJames Harperに捧げられた一枚で、怒りと立ち上がる強さが込められた作品。YouTubeでも再生回数は10万回を下回っていて、こういうラッパーはメインストリームにはなれないのだろうかと憂いてしまう。

CMDWN『ATLANADA 2』(2018)

D.A.N.『Sonatine』(2018)

David Byrne『American Utopia』(2018)

Dorian Concept『The Nature of Imitation』(2018)

Honey C『Wildfire』(2018)

Ice Cube『AmeriKKKa's Most Wanted』(1990)

Kendrick Lamar『good kid, m.A.A.d city』(2012)

Laurel Halo『Raw Silk Uncut Wood』(2018)

Lindigo『Komsa Gayer』(2017)

Lotic『Power』(2018)

Nicki Minaj『Queen』(2018)

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Cardi Bもそうだけど、南米やアフリカ音楽の要素を取り入れているのが面白いし(ジャケも最高、タイポグラフィを手掛けたのは日本人らしい)、現在のフィメールシーンの二大巨頭がそういうことをしているというシンクロニシティも興味深い。

それにしても、膨大な数のラッパーをネームドロップした「Barbie Dreams」や数々のセルフボーストを見るにつけ、彼女は非常にオーセンティックなラッパーなのだと再認識。スキルもあるし。男性がマッチョイズムの時代を終えどんどん内省的になっているのに対し(Jay-Zが浮気を謝る時代!)、女性がガンガン威張り散らすというのも痛快でいいじゃないか。

Nico『The End...』(1974)

O.C.『Word...Life』(1994)

Polaris『天体』(2018)

Rafuu『MUZEUM』(2018)

Schoolly D『Saturday Night! The Album』(1987)

SHISHAMOSHISHAMO 5』(2018)

SKY-HI『FREE TOKYO』(2018)

Sons of Kemet『Your Queen Is a Reptile』(2018)

Tarkan『Karma』(2001)

Tony Bennett『I Wanna Be Around...』(1963)

Travis Scott『ASTROWORLD』(2018)

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めちゃくちゃ音楽的に噛み応えのあるアルバムだった。豪華ゲスト陣の並びを見てもわかる通り現行のヒップ・ホップ / R&Bの総括みたいな作品。

X『VANISHING VISION』(1988)

カネコアヤノ『祝祭』(2018)

乃木坂46『ジコチューで行こう!』(2018)

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表題曲とかMVが公開されてる曲についてはもう書いてしまったので、3期生によるカップリング「自分じゃない感じ」が素晴らしいという話を。Lyrical Schoolのようなさわやかなポップスで、ちょっぴり挟み込まれるラップもかわいらしい。なんなら表題曲より夏っぽくて、今回の最大の収穫はこの曲。「地球が丸いなら」よりもこっちのMV作ってほしかったかも。

ユニコーン『PANIC ATTACK』(1988)

『London Is The Place For Me』(2002)

<映画>

『ムーンライト』(2016)

許されざる者』(1992)

<書籍>

ユリイカ 8月号 特集:ケンドリック・ラマー』

ユリイカ 2018年8月号 特集=ケンドリック・ラマー ―USヒップポップ・キングの肖像―

ユリイカ 2018年8月号 特集=ケンドリック・ラマー ―USヒップポップ・キングの肖像―

 

 フジロックのための来日に合わせた、1冊まるまるケンドリック・ラマーな1冊。新田啓子によるケンドリックの詞の中の「母」の考察、大和田俊之×磯部涼×吉田雅史の鼎談、Genaktionによる「中庸なラッパー」の頂点としてのケンドリックという考察などなどとにかく面白い論考が満載だった。そしてSKY-HIのインタビューも読む前のハードルをはるかに超える良さ。こんなにまっとうに考えてるのに肝心の曲が・・・と思っていたところにあの『FREE TOKYO』を出されてしまったので、お、おう・・・!となった。あと、奥田翔による「トーチ」の文章は面白く読めたのだが、巻頭の未邦訳インタビューの彼による訳が読みにくくてしょうがなかった。あれほどの文章が書ける人なのになぜ・・・?といった感じだ。でも何はともあれ、音楽ファン必読の書。