圧倒的面白さでぶん殴る―映画『銀魂』レビュー

 

もはや映像化されてない漫画を探す方が難しい、といった具合にここ数年ものすごい勢いで増えた漫画の実写化という一連の流れ。その中でも漫画単体でものすごい人気を誇る作品は敬遠される傾向にあったように感じるのですが、ここ数年はそういった「聖域」なぞ取っ払ってやる、という勢いめいたものすら感じます。これから『ジョジョの奇妙な冒険』が公開されるし、つい最近は『ワンピース』のハリウッドでの実写化(これはTVドラマだが)が発表されたばかり。

漫画に対して最近になるまで全く興味がなかったぼくとしては、漫画原作の作品が増えると困るわけです。見に行くモチベーションがあまりなくなってしまうので。まあそれでもぼちぼち見に行っていて、最近だと『3月のライオン』は面白かったし、去年の『ヒメアノ~ル』もやばかった。『聲の形』なんかは好きすぎてブルーレイ買いましたからね、ハイ。ようはまあ、面白くてちゃんと作られてればいいわけです、ハイ。

そんなテンションで見てきました。『銀魂』。

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原作知識ゼロで見に行ったので、これは自殺行為に等しいかもなーとか思ってました。これは原作ファンだけがせいぜい楽しめるものであって、ぼくみたいに「映画が好きだから」という理由で見に行っても全然楽しめないんじゃないかなーって思ってました。

映画が始まって、正直最初のかぶと狩りの場面あたりまではその気持ちを引きずってました。もううがった見方をしてやろうという気持ち満々で。「うわーCGやすっちーなー」「アクションシーンみずらいなー」とかあとから文句たくさん言ってやろうと思ってました。「おい木村、帰るぞ」なんてアウトレイジばりのセリフを吐き捨てて劇場をあとにすることになるかもな、なんて思ってたわけです。

そしたらその10分後にはもうアウトレイジアウトレイジでも「おもしれーじゃねーかバカヤロウ!」などと毒づいてしまう始末。映画館であれほど笑ったのは去年の『ゴーストバスター』以来。これ満員の劇場で見たら相当な量の笑い声が聴けたことでしょう。

まず、演者陣のコメディアン(コメディエンヌ)としての才能が余すことなく発揮されてた。とくに「ロリコン」こと佐藤二朗の面白さがさく裂してました。菅田将暉演じるメガネ君との掛け合いのシーンはもう見事の一言。ほかにも、我らが早見あかりは「ウレロ」シリーズで鍛えられた分すごくよかったし、橋本環奈の顔芸も見ごたえあったし、ムロツヨシも通常運転でサイコー。アルコアンドピースの酒井もちょい役ながらきちんとおいしいとこ持ってってました。

『勇者ヨシヒコ』シリーズでもやりたい放題やっているという福田雄一監督の手腕も冴えわたってる。パロディをやることで「ギリギリ攻めすぎでしょ!」と思わせること自体で笑いを取り、それでいてパロディのやり方の質も決して低くない。クオリティでもちゃんと持ってく。

そういった数々のお笑いシーンでこっちの意識をもうろうとさせたあたりでシリアスパートをそつなくこなす。CGの粗さとかアクションシーンの見にくさとかは結構ひどいんだけど、そこで冷めてしまわないようなクオリティにはギリギリ仕上がってる。

シリアスパートをちゃんと独立させてたところも好感が持てました。チープなCGとか、作品の構造上「いやチープすぎるだろ!」的なメタ的ツッコミを登場人物にさせることはいくらでもできたはずなんだけど、敢えてそれをやっていない。ギャグパートとのメリハリの方を優先したんだろうけど、多分これで正解だったと思う。シリアスパートにもいちいちツッコミが入ってたら多分辟易してたと思う。ここはあくまで「かっこいい」と思うことに集中しよう、と見てる側も自然に気持ち切り替えれるつくりになってるし。「これ、ギャグ?シリアス?どっち?」という戸惑いがあっては一気に乗れなくなっちゃうしね。

つまり『銀魂』を実写でやるにおいて最も輝くであろうお笑いシーンを突き詰めるところまで突き詰めて加点を重ね、ちょっとしょぼくなってしまうであろうシリアスパートでの減点を最小限にとどめる。そしてそこの振れ幅で作品・キャラの魅力をグンと伸ばす。これはパワープレイと言ってしまえばそれまでなんだけど、この漫画を実写化するにおいて正解はこれしかないと思う。

そして忘れてはいけないのは、「銀魂」というもともとの作品がこういう「ギャップ」を想定して作られてる(であろう)漫画であるということ。もともとがギャグマンガだからこそできる作りですよね。これが『ワンピース』ではこうはいかないわけですから。作品と監督とキャストがこれ以上ないくらいの化学反応を起こしてる。これは企画勝ちですわな。一緒に見に行った友人が開始前のジョジョの予告編を見て「これ、たぶんアカンやつ」と言ってたのはそういうこと。やっぱ何でも実写すりゃあいいってわけじゃないのよね。

今後の漫画の実写化を作る際の「超えるべき壁」が一つできてしまったな、といった感じ。これを超えられるかどうかが結構でかいと思う。