圧倒的面白さでぶん殴る―映画『銀魂』レビュー

 

もはや映像化されてない漫画を探す方が難しい、といった具合にここ数年ものすごい勢いで増えた漫画の実写化という一連の流れ。その中でも漫画単体でものすごい人気を誇る作品は敬遠される傾向にあったように感じるのですが、ここ数年はそういった「聖域」なぞ取っ払ってやる、という勢いめいたものすら感じます。これから『ジョジョの奇妙な冒険』が公開されるし、つい最近は『ワンピース』のハリウッドでの実写化(これはTVドラマだが)が発表されたばかり。

漫画に対して最近になるまで全く興味がなかったぼくとしては、漫画原作の作品が増えると困るわけです。見に行くモチベーションがあまりなくなってしまうので。まあそれでもぼちぼち見に行っていて、最近だと『3月のライオン』は面白かったし、去年の『ヒメアノ~ル』もやばかった。『聲の形』なんかは好きすぎてブルーレイ買いましたからね、ハイ。ようはまあ、面白くてちゃんと作られてればいいわけです、ハイ。

そんなテンションで見てきました。『銀魂』。

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原作知識ゼロで見に行ったので、これは自殺行為に等しいかもなーとか思ってました。これは原作ファンだけがせいぜい楽しめるものであって、ぼくみたいに「映画が好きだから」という理由で見に行っても全然楽しめないんじゃないかなーって思ってました。

映画が始まって、正直最初のかぶと狩りの場面あたりまではその気持ちを引きずってました。もううがった見方をしてやろうという気持ち満々で。「うわーCGやすっちーなー」「アクションシーンみずらいなー」とかあとから文句たくさん言ってやろうと思ってました。「おい木村、帰るぞ」なんてアウトレイジばりのセリフを吐き捨てて劇場をあとにすることになるかもな、なんて思ってたわけです。

そしたらその10分後にはもうアウトレイジアウトレイジでも「おもしれーじゃねーかバカヤロウ!」などと毒づいてしまう始末。映画館であれほど笑ったのは去年の『ゴーストバスター』以来。これ満員の劇場で見たら相当な量の笑い声が聴けたことでしょう。

まず、演者陣のコメディアン(コメディエンヌ)としての才能が余すことなく発揮されてた。とくに「ロリコン」こと佐藤二朗の面白さがさく裂してました。菅田将暉演じるメガネ君との掛け合いのシーンはもう見事の一言。ほかにも、我らが早見あかりは「ウレロ」シリーズで鍛えられた分すごくよかったし、橋本環奈の顔芸も見ごたえあったし、ムロツヨシも通常運転でサイコー。アルコアンドピースの酒井もちょい役ながらきちんとおいしいとこ持ってってました。

『勇者ヨシヒコ』シリーズでもやりたい放題やっているという福田雄一監督の手腕も冴えわたってる。パロディをやることで「ギリギリ攻めすぎでしょ!」と思わせること自体で笑いを取り、それでいてパロディのやり方の質も決して低くない。クオリティでもちゃんと持ってく。

そういった数々のお笑いシーンでこっちの意識をもうろうとさせたあたりでシリアスパートをそつなくこなす。CGの粗さとかアクションシーンの見にくさとかは結構ひどいんだけど、そこで冷めてしまわないようなクオリティにはギリギリ仕上がってる。

シリアスパートをちゃんと独立させてたところも好感が持てました。チープなCGとか、作品の構造上「いやチープすぎるだろ!」的なメタ的ツッコミを登場人物にさせることはいくらでもできたはずなんだけど、敢えてそれをやっていない。ギャグパートとのメリハリの方を優先したんだろうけど、多分これで正解だったと思う。シリアスパートにもいちいちツッコミが入ってたら多分辟易してたと思う。ここはあくまで「かっこいい」と思うことに集中しよう、と見てる側も自然に気持ち切り替えれるつくりになってるし。「これ、ギャグ?シリアス?どっち?」という戸惑いがあっては一気に乗れなくなっちゃうしね。

つまり『銀魂』を実写でやるにおいて最も輝くであろうお笑いシーンを突き詰めるところまで突き詰めて加点を重ね、ちょっとしょぼくなってしまうであろうシリアスパートでの減点を最小限にとどめる。そしてそこの振れ幅で作品・キャラの魅力をグンと伸ばす。これはパワープレイと言ってしまえばそれまでなんだけど、この漫画を実写化するにおいて正解はこれしかないと思う。

そして忘れてはいけないのは、「銀魂」というもともとの作品がこういう「ギャップ」を想定して作られてる(であろう)漫画であるということ。もともとがギャグマンガだからこそできる作りですよね。これが『ワンピース』ではこうはいかないわけですから。作品と監督とキャストがこれ以上ないくらいの化学反応を起こしてる。これは企画勝ちですわな。一緒に見に行った友人が開始前のジョジョの予告編を見て「これ、たぶんアカンやつ」と言ってたのはそういうこと。やっぱ何でも実写すりゃあいいってわけじゃないのよね。

今後の漫画の実写化を作る際の「超えるべき壁」が一つできてしまったな、といった感じ。これを超えられるかどうかが結構でかいと思う。

 

今週のまとめ2017/07/17~2017/07/23

<月曜日>

家から全然でなかった。

SIMI LABそろそろ聴かなきゃな、ということで聴きだした。

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才能あるメンバーたちがバチバチに繰り広げる化学反応、まさに和製Wu-Tang Clanだよ。各メンバーのソロ作とかも聴きたい。あれ、KANDYTOWNのソロ作も聴きたいとか言ってたな俺。大変だ。

友達がTwitterで呟いていてしった金属バットの漫才が面白い。

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ツッコミの友保の顔がいい。この絶妙な呆れ顔とも何とも言えない表情。歯の出方が特にいい。もっともっと売れていくのかも。

<火曜日>

メルギブの『ブレイブハート』鑑賞。

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物語に必要な要素をこれでもかってくらいに詰め込んだ重厚も重厚な時代劇でした。3時間という尺も見事に使い切ってる。

<水曜日>

久しぶりに完全に一人で過ごせた。理想の休日。

そして久々にメタルをば。Obituaryの新譜、セルフタイトルにするだけあってかなり良い。ストレートなデスメタル、ストレートにかっこいい。小細工なし!

ワンピースのチョッパーが仲間になる一連のくだりで涙腺を持ってかれました。

ONE PIECE 17 (ジャンプ・コミックス)

ONE PIECE 17 (ジャンプ・コミックス)

 

そしてex.FACTのメンバーによるShadowsの1stがよい。

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これなんかはMVもめちゃくちゃかっこいい。joy oppositeも聴かなきゃだなこれは。

<木曜日>

本を読むのだ。この夏休みは。と思い出したので本を読んだ。正確に言うと読みかけだったものを片付けた。

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)

 

評論というよりも、人が映画についてあれこれ言っているのが好きでブログを読んだりラジオを聴いているのだけれど、そういえば本という形できちんと映画評論について読んだことがなかったなと反省。何か読んでみようかな。  

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート2 (ハヤカワ文庫JA)

 

 冒頭に収録されている草原野々『最後にして最初のアイドル』がぶっ飛んでいてとにかく面白い。SFの「おもしろさ」だけをとんでもない勢いでぶん投げられたような気分。

All That Remainsの新譜『Madness』は凡作です。以上!

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The Holliesの『Hollies』(1965)を聴いたのだが、この1曲目からして素晴らしい。

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ハーモニーによる多幸感。いやー最高だ。

<金曜日>

朝一でチェスター・ベニントンの訃報を聞いて悲しみに暮れる。やりきれない思いでとりあえず記事を書いたけど、なんだか全然思ってることの10分の1もかけてない気がする。

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チェスターのソロプロジェクト、Dead by Sunriseもよかったなあ。アグレッシヴなロックチューンから甘美なバラードまで、彼の魅力が存分に引き出されたアルバムだった。ひそかに2枚目を期待していたのだけれど、とにかく残念。

Out of Ashes

Out of Ashes

 

 いてもたってもいられなくなって、なんとなく自転車で渋谷のツタヤまで行ってCDをレンタルしてきました。あ、チェスターとか全然関係ないやつを。来月聴く用の【2008年リリース作品】と、いつぞやのミュージックマガジン日本語ラップベストでApple Musicにないやつをちらほら。

<土曜日>

MONDO GROSSOの新作とCashmere Catの新作、どちらもヒくほどすごい。

サイッコー。圧倒的完成度にぶん殴られる感覚。久々に味わった感覚でした。

ヒッチコック『鳥』(1966)鑑賞。怖いねー。あのジャングルジムにカラスが集まってくるシーンは本当にぞわっとした。やっぱあれだね、「同じものが、一か所にワッといると、気持ちわりっすよね」だ(©設楽統)。

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<日曜日>

陸井栄史とサ上の『サウエとラップ~自由形~』を読んだ。

 ん~、なんだかなあ・・・ラップがよくできてるだけに、漫画で読む意味が軽減してる気がする。ゲストもR-指定からZeebra、DOTAMA、漢に崇勲と豪華。それだけにいよいよ漫画で読む意味がなあ。まあラップに明るくない人が読んだら面白いんだろうけど、決してマニア向けのものではないな、と。ラップ以外の部分は平々凡々。

なんだか『デトロイト・メタル・シティ』の作者も新しくラップの漫画を始めるらしく、ホント流行ってますね、ラップが。はい。

The Sonicsの『The Sonics Boom』(1966)を聴きました。60年代なのに勢いは完全にパンク、ギターのひずみ方はハードロックだ。すごい。

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<今週のまとめ>

・音楽

SIMI LAB『Page 1: ANATOMY OF INSANE』(2011)

SIMI LAB『Page 2: Mind Over Matter』(2014)

Obituary『Obituary』(2017)

Shadows『illuminate』(2017)

Jay-Z『The Dynasty: Roc La Familia』(2000)

All That Remains『Madness』(2017)

The Association『Renaissance』(1966)

The Hollies『Hollies』(1965)

Lovin' Spoonful『Daydream』(1966)

MONDO GROSSO『何度でも新しく生まれる』(2017)

Cashmere Cat『9』(2017)

Stevie WonderUp-Tight』(1966)

Wizkid『Sounds from the Other Side』(2017)

The SonicsThe Sonics Boom』(1966)

・映画

『ブレイブハート』(1995)

『鳥』(1966)

・本

モルモット吉田『映画評論・入門!』(2017)

V.A.『伊藤計劃トリビュート2』(2017)

・マンガ

原泰久『キングダム』6~7巻

渡辺渡『弱虫ペダル』7~12巻

末次由紀ちはやふる』4~8巻

尾田栄一郎『ワンピース』13~17巻

陸井栄史&サイプレス上野『サウエとラップ~自由形~』1巻

<2017年>

音楽アルバム:171枚

映画:50本

本:19冊

マンガ:55冊

炎上商法はエンタメではない―シバターの発言から考えてみた

YouTuberのシバターとラッパーの漢a.k.a.GAMIがここ1か月ほどで繰り広げた「ビーフ」が話題になっていましたね。詳しい経緯は各々の動画に詳しいので割愛します。

このビーフ、最終的にはシバターが動画内で完全に自らの非を認めて無事解決を見たのですが、シバターがパチスロ営業中にヒップ・ホップのヘッズに絡まれるという穏やかではない事件も起きるなど、双方のファンにとってなんだか後味が悪いものでした。ZeebraやD.O.などもWREPの番組内で言及するなど、なかなかの大ごとになっていました。

個人的には漢さんにはかっこいいラップだけをしていてほしいので、最近の漢さんぽとかYouTube活動での「お茶目なおじさん」っぷりには思うところもあるのですが、彼なりに考えての行動なのでしょう、ここでそれ自体を非難することは控えておきます。

シバターの動画も嫌いじゃないです。ほかにはいないキャラだし、YouTubeという枠の中で見たら人気もすごいし、実力もある。有象無象のYouTubeの中でも抜きんでてる存在だと言って差支えはないでしょう。

でも、今回の騒動を通じて考えることがあった。彼の、人をおちょくり、不快な気持ちにさせることは果たして本当にエンターテインメントなのだろうか、と。

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これは今回の騒動の締めくくりにアップされた、件のシバターの謝罪動画である。注意してみてほしいのは6:30~からの部分である。要約すると、彼が言っていることはこういうことだ。

誰かに対して、むかつく・腹が立つといった負の感情を持つこともエンタメである。日々生きていくうえで感情が上下することこそがエンタメであって、僕の動画を見て腹が立つことすら楽しんでほしい。その方が人生は豊かになるとぼくは思う。 

ぼくはこれを聴いた時に強烈な違和感を覚えた。最初はその違和感の正体がわからず、「まあ、でも、そうか・・・」と一瞬あきらめかけたのだけれど、今になってようやくこの正体を突き止めることができたので、この記事を書くことにした次第だ。

ぼくが違和感を覚えたきっかけは、彼がこの説明の中で「ホラー映画」を引き合いに出していた点だ。ホラー映画を見てうわ怖い!グロい!と思うのと同じで、ぼくの動画もエンタメなのだ、と彼は言っていた。

この論が一見正しく聞こえてしまうのは、確かにホラー映画を見てぼくたち(一部の特殊な趣味を持つ人たちは除く)は「恐怖」という負の感情を手に入れ、そしてそれを「娯楽」として楽しむ。宇多丸氏がラジオか何かで言っていたエピソードとして、映画『セブン』を見た人が「宇多丸さん、あんな映画許しちゃいけませんよ!」と怒っていた、というものがある。宇多丸氏は「彼にここまでの感情を持たせることができた時点でこの映画はエンタメとして成功している」というような趣旨の発言をしていたのだが(うろ覚えで申し訳ない)、これは一見シバターのエンタメ観に沿ったものであるように見える。

しかし、ここには一つ重大なトラップが隠されいている。それは「現実」と「フィクション」の違いである。当たり前すぎて見落としがちだが、シバターのエンタメ観はこの差を完全に取っ払ったものになっている。この二つの差は、無視するには大きすぎるとぼくは思うのだ。

つまりはこういうことだ。ホラー映画であれ、あるいはお化け屋敷であれ、ゴア描写のえぐい小説であれ、それを「娯楽」として楽しむことができるのは、観客(=われわれ)に戻ってくることができる「現実」が担保されているからである。映画も本も終わりがあるし、お化け屋敷であれば出口がある。映画を見終わった時に、お化け屋敷を出た時に、我々は現実に引き戻される。その時に初めて「ああ、怖かったな(腹が立ったな)」と自分の体験を振り返ることで、その娯楽は完成する。

果たしてシバターの今回の動画はどうだろうか。「ヒップ・ホップ」「漢」という現実の世界のものをおちょくり、それらを愛する人たちの心に「負の感情」を植え付けた。だがその先に観客が戻るべき現実は用意されていない。謝罪動画がそうであろうか?いやいや、いくら謝罪したところで彼がヒップホップや漢のことを悪く言った事実は消えないし、我々の負の感情も消え去らない。「あ、胸糞悪かった」と振り返ることができないのである。これはエンタメではない。

フィクションの中では、恐怖を感じるのはあくまで画面の中の人間であり、我々はそれに感情移入をして怖がっているに過ぎない。だがシバターが今回のビーフの中で行ったことは漢への、そしてヒップ・ホップを愛する人たちへの直接的な攻撃である。自分が愛するものを攻撃しておいて、「これはあなたの感情を揺さぶるものだ、だからエンタメなのだ」と言われてしまっては、(極論だと承知の上で言うが)戦争も殺人も暴力もエンタメになってはしまわないか。シバター、あんたのエンタメ論は完全に破たんしているぞ。シバターだけではなく、いわゆる「炎上商法」を行っている人たち全員に言えることだが。

これがシバターがホントにヒップホップを「ヨーヨー言ってるだけのダジャレ」だと思っていたのなら、まだそれは「批評」「批判」または「意見」「感想」という体を保つことができるのだが(それでも稚拙なものであることに変わりはないが)、実はシバター自身RHYMESTERをよく聞くなど、決してヒップ・ホップに理解がないわけではない。つまり彼は思ってもないことを言うことで、純粋に「人を不快な気分にさせること」を目的としたエンタメを試みたのだということがわかる。つまりは破たんしたエンタメを、だ。

これを「エンタメ」と呼ぶことが許されるのであれば、こういった「エンタメ」が増えていくのであれば、間違いなくこの世は生きづらいものになる。嫌悪や憤怒がまかり通る、ストレスフルな世の中になってはしまわないだろうか。実際にシバターはヒップ・ホップファンを名乗る人物に絡まれるという事件を経験しているのだからそれを実感したはずだ。彼が今回エンタメだと思って起こした一連の行動は、一切エンタメなどではない。娯楽というのはそういうものではない。もう一度、深く考え直してほしい。

みんなにとって世の中が楽しいものになることを祈って。

チェスター・ベニントンの死を悼んで。

朝、寝ぼけ眼で携帯を開くと母からのメールが。

「大丈夫?あまり落ち込まないで、気をしっかり持って!一回、思いっきり泣こうか。」

えーと・・・?たしかに就活はうまくいかなかったけど、それ相談したのはずっと前だしな・・・と働かない頭に鞭打ち考える。そして一つの可能性にたどり着いた。誰かが死んだんだ。

スマホのニュースアプリを立ち上げて、そこに現れた文字を読んだ瞬間、ぼくは言葉を失った。チェスターが、自殺した。

年を召したロックレジェンドの死ではない。命を懸けて競技に参加しているF1ドライバーの死ではない。それならまだ割り切れる。でもなぜ。なぜ彼が死に向かわなければならなかったのか。5月に新作を出したばかり。11月の来日公演に行こうかなんて後輩と話していた矢先の死だ。最初はなぜ、なぜとそれだけを頭の中で繰り返していた。

7月20日はクリス・コーネルの誕生日だったらしい。彼が敬愛するボーカリストだ。そして今年の5月に自殺した。その死が彼にそこまでの影響を与えていたとは。

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先週こんな記事を書いたばっかりだ。

ファッションがダサくなっても、ギターのブラッドがライブで打楽器を担当し始めても、マイクが歌い始めても、ジョー・ハーンが全然スクラッチしなくなっても、ぼくはこのバンドを聴き続けている。多分解散してしまったらどのバンドよりも悲しいと思う。ぼくにとってはそういうバンドだし、ずっと応援していきたいなあ。

解散よりも先に訃報を聞くとは思ってなかった。本当に。これまでもAvenged SevenfoldのThe RevやSlipknotのポール、ロニー・ジェイムス・ディオやレミー、クリス・スクワイアなど多くの訃報を耳にしてきたけれども、ここまで惚れこんでいたミュージシャンに死なれてしまったのは人生初。だから少しばかり感謝と共に思い出話をさせてください。

彼を始めて見たのは、スカパーの音楽チャンネルで流れていた「One Step Closer」のMVだった。

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Shut up when I'm talking to you

小学6年か中学1年の時分だったと思う。とにかくこれまで自分が聴いてきた音楽とは全く異質のものがそこにあった。スクリームという歌唱方法も、怒りをそのまま音にしたようなヘヴィネスも、腕に纏ったタトゥーも、ぼくにとっては新鮮なものであり、なによりもかっこいいと思わせてくれるものだった。中学の美術の時間に『好きな音楽について』というテーマで「Shadow Of The Day」というへたくそな絵を描いたりもした。

そこからすべてが始まったんだ。気がつけばぼくは彼らのアルバムをすべてそろえていたし、もっと激しいのを求めてメタルを聴いていたし、BURRN!を読み始めていた。音楽を聴くという営みが、生活の一部になっていた。リンキン・パークという土台があったから、ヒップ・ホップにもすんなり入ることができた。彼らがアルバムごとに見せる違う色が、ぼくの世界を広げていった。今あるぼくの土台を作り上げたのは、紛れもなくリンキン・パークであり、あのMVのなかで逆さになって叫んでいたチェスターだ。

ラップ・ロックを脱却した3rd『Minutes to Midnight』(2007)以降は特に、彼のボーカルには円熟味がのり、ロック界随一の美声を聞かせてくれた。

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攻撃的な曲も、誰をも包み込むようなバラードも、どちらもここまで歌いこなせる人なんてそうそういない。ホントに惜しい人を亡くした。

ロック界のミュージシャンのみならず、Chance The Rapper、きゃりーぱみゅぱみゅらほかの業界からも次々と追悼コメントが寄せられている。軽くTwitterを覗いたところLEON a.k.a. 獅子(第8回高校生ラップ選手権王者)、ちゃんみななど若い世代のアーティストにも彼の歌声は届いていたことに驚いた。

チェスターよ、あなたの音楽を聴いて育った人たちがどう萌芽するのか見れなかったのが悔やまれる。ほんとなんで自殺なんかしちゃったんだよ・・・あなたの歌を生で聴けなかったのが僕の悔いです。ご冥福をお祈りします。

今週のまとめ2017/07/10~2017/07/16

<月曜日>

本格的な夏休みがスタート。

日曜日に買ってもらったワンピースの1~9巻を一気に読んでしまった。ウソップ海賊団のくだりやサンジのクソお世話になったくだりやナミが助けてほしがってるくだりを涙ボロボロたらしながら読んだ。それを新鮮に読めるというのはどうだ、うらやましいだろみんな。 

ONE PIECE  1 (ジャンプ・コミックス)

ONE PIECE 1 (ジャンプ・コミックス)

 

Jay-Zの新作を聴きたいのでデビューアルバムからたどることにした。かっけえ。

トラックもラップも最上級。ヒップ・ホップを聴く喜びを与えてくれる。

タマフルにて紹介されていた『大学1年生の歩き方』読了。大学5年生にして。とてもためになるので日本津々浦々のすべての大学1年生は読むべき。 

大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ

大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ

 

 そしてiTunesでしばらく前に「今週の映画」に選ばれていた『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)を鑑賞。90分という短さでサクッと見れるサクッと面白い映画でした。

そしてポエトリーラッパー神門の新作「親族」は名作。祖父の死から始まるコンセプトアルバムなんだけど、ドキュメンタリーアルバムというにふさわしいくらい克明に心の動きを描き切っていて、ぼくも祖父が死んだときのことを思い出した。

<火曜日>

 タマフルブック第2弾『中動態の世界 意志と責任の考古学』読了。 「考古学」の名の通り、昔あたりまえにあったものを今と照らし合わせながら再現していく、その営みがとても面白かった。

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
 

 久しぶりにこんなに難しい本を読んだ。こういうのをサラサラ読めるようにならなければなあ、と反省。この夏休みは本をとにかく量こなせるようになりたい。

続けてこの本も読了。

MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門

MCバトル史から読み解く 日本語ラップ入門

 

この間このブログで取り上げた「MCバトルはスポーツか?」という問題に僕なんかよりより重厚な情報量と歴史観で鮮やかにひも解いている一冊。結構名指しで問題提起してたりして、プレイヤーの彼にしか出せない説得力があってよい。

そしてこんな日に「フリースタイルダンジョン」。般若敗北。やっぱvs漢がベストバウト。般若と漢が認め合う瞬間を見れてよかった。そして晋平太はもうそろそろ音源ガンバレ。

モンスター解散は噂に聴いていた通り。さすがにずっと続けさせるわけにはいかないよなあ。みんなそれぞれの人生があるわけだし。いっそモンスターという制度を廃止すればいいのに。毎回トーナメント戦やって前回チャンピオンがラスボス、みたいな。テレビじゃそれだけじゃうまくいかないのか。

<水曜日>

最近食べ過ぎていたのでダイエット開始。豆腐に醤油とごま油かけて食べるだけで満足できる体になろうっと。

MC松島が去年のリオ五輪の期間に製作した「吉田沙保里」シリーズにはまる。こんなくだらないことを一生懸命やってるのがサイコーに面白いし、「めんどくさいやつ」akaMC松島、という側面が最大限生かされててとにかくサイコー。ホントこの人は頭がいい。

このあとフツーにアルバムも作っちゃったみたい。

そして『ジョン・ウィック』(2015)鑑賞。やっと見れた。思ったほど、でした。でも続編見に行きます。

最近友達とか周囲の人間の音楽の聴き方に疑問を呈したいという気持ちが強いので、なんか書こうかな。

<木曜日>

ということで書いた。

満喫に行こうと思ったけど身分証を忘れたので仕方なくツタヤでコミックレンタル。20冊を持って帰ってくるのが大儀。

ずっと読みたかったマンガ読めた。ちょっとでもMっ気のある男は必読。そうでなくても必読。こんな中学生でありたかった・・・と思っていたら、一つだけぼくにも「高木さんエピソード」が。

放課後学級新聞づくりで残っていた時、同級生の可愛い子が学生服を着たいと言いだしたので貸してあげた。そしたら向こうは「セーラー服着てみたい?」と来たもんだ。おそらくあの時のぼくは西方君と同じ顔をしていたに違いない。あーあ、着ておけばよかったなあ。 真由ちゃんのセーラー服。

<金曜日>

花金だろうが何だろうが、夏休みの大学生にとってはクソ平日。漫画を読み、久しぶり自炊を始めようと買い物に行き、部屋の掃除をば。続きは明日。

シェルブールの雨傘』(1963)を鑑賞。いかにもカラー映画黎明期といった趣の美術・衣装が美しい。近所のツタヤの「10代・20代のうちに見たい映画」のコーナーにあったので皆さんも是非。カトリーヌ・ドヌーヴが美しすぎる。

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THE OTOGIBANASHI'Sのワークで知られるVaVaのラップアルバム、めちゃくちゃよい。

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YouTube再生回数1万回以下なの意味わかんねえ。唾奇xSweet Williamの次はこれだぞ。

ポッセカットにC.O.S.A.、そして9月のPUNPEEと、Summitがとにかく元気だな。

<土曜日>

自炊生活スタート。続けるぞー。

映画『300<スリーハンドレッド>』(2007)鑑賞。まあ素直にかっこいいわな。スローモーション多用には萎えたけど。

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F1の予選はアロンソのQ1がハイライトでした。よくやった。と思ったら30グリッド降格と聞きずっこける。誰だかも言ってたけどドライバーの責任じゃないペナルティでグリッド降格はやるせないわな。ハミルトンはシューミーの記録まであと1つ。これは勝利回数記録も塗り替えてしまうのでは。

<日曜日>

 TOHOシネマズに『ジョン・ウィック:チャプター2』を見に行く。

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前作でよかったところをより拡大した、正統派進化作でよかった。殺し屋の世界の描き方、アクション、ロケーション、総てが一回りずつ大きくなってる。ということで前作よりも好きです。最終章に向けた期待のさせ方もグッド。

帰りにツタヤで漫画を借りたんだけど、同じ巻を2つずつレジに持って行ってしまい非常に恥ずかしかった。かわいい店員さんだっただけに余計悔やまれる。

F1イギリスGP決勝観戦。久しぶりに頭からケツまで見た。メルセデスの本気、めちゃくちゃ強いね。まさに盤石。フェラーリは最後ごたついたね。マクラーレンホンダは・・・もっと頑張れ。ライコネンシャンパン呑みが見れたので満足。

<今週のまとめ>

・音楽

The Beach Boys「Pet Sounds」(1966)

神門「親族」(2017)

Jay-Z「Reasonable Doubt」(1996)

Jay-Z「In My Life Time, Vol.1」(1997)

Jay-Z「Vol.2...Hard Knock Life」(1998)

Jay-Z「Vol.3: The Life and Times of S.Carter」(1999)

Simon & Garfunkel「Sounds of Silence」(1966)

VaVa「Low mind boi」(2017)

Rise Against「Wolves」(2017)

Yardbirds「Roger the Engineer」(1966)

The Kinks「Face to Face」(1966)

Dangerkids「blacklist_」(2017)

Sam & Dave「Hod On, I'm Comin'」(1966)

Buffalo SpringfieldBuffalo Springfield」(1966)

・映画

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)

ジョン・ウィック』(2015)

シェルブールの雨傘』(1963)

『300<スリーハンドレッド>』(2007)

ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)

・本

トミヤマユキコ・清田隆之『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』

DARTHREIDER『MCバトル史から読み解く日本語ラップ入門』

・マンガ

山本崇一朗からかい上手の高木さん』1~5巻

原泰久『キングダム』1~5巻

尾田栄一郎『ワンピース』10~12巻

渡辺渡『弱虫ペダル』1~6巻

末次由紀ちはやふる』1~3巻

<2017年>

音楽アルバム:159枚

映画:49本

本:17冊

マンガ:36冊

Linkin Parkを「リンキン・パーク」と呼ぶか、「リンキン」と呼ぶか。

思い入れの違いである。「リンキン」だと少し小ばかにしている感があると感じてしまうのはぼくだけだろうか。メタルのことを「ヘビメタ」、日本のヒップホップのことを「日本語ラップ」と呼ぶのと同じ感じ。

「リンキン」と呼ぶとなぜかニュー・メタル、ラップロックバンドとしてのリンキン・パークという一側面だけを切り取っているようにも聞こえる。そしてそれは悲しいかな、「過去のバンド」という響きを湛えている。

でも中学生の時に彼らの音楽と出会い、サウンドががらりと変わっていく様をリアルタイムで目撃し、そしてそれでもアルバムをリアルタイムですべて聴いてきたぼくからすると、そんな物言いは少し寂しい。メタルとヒップ・ホップ、両方大好きなぼくの音楽的素地を作ったのは間違いなく彼らなわけで。ちょっとダサい物言いになるけど「人生を変えたバンド」はぼくにとってはリンキン・パークだ。間違いなく。

中学生だった時に僕がおすすめしたらゴリゴリにこのバンドにはまっていた友達(押尾学が大好きだった)は元気にしているだろうか。押尾学が逮捕された時、本人以上にバッシングされてたなあ。

さて、このバンドの最新作、『One More Light』がリリースされた。と言っても結構前の話だけれども。

One More Light

One More Light

 

リード曲はこんな感じ。

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もう完全にポップ。今回の作品、たぶんギターがなっている時間はこれまでのディスコグラフィーの中では一番少ない。

前作『The Hunting Party』(2014年)はロック路線に回帰はしたものの全体的には大味で好きにはなれなかった分、今作で繊細な音作りとハイクオリティなメロディが戻ってきたことはすごくうれしい。

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Pusha Tとイギリス期待の新人Stormzyをフューチャリングしたこの曲で、マイク・シノダが流行りの3連符フロウに挑戦しているだけでぼくは満足です。そう、彼らは常に流行の最先端を自分たちの音楽に落とし込むのがうまい。それにしてもこのバンド、キャリアを重ねるごとにMVとファッションがダサくなっている気がするんだが。「One Step Closer」と「Faint」が一番かっこいいと思う。

ファッションがダサくなっても、ギターのブラッドがライブで打楽器を担当し始めても、マイクが歌い始めても、ジョー・ハーンが全然スクラッチしなくなっても、ぼくはこのバンドを聴き続けている。多分解散してしまったらどのバンドよりも悲しいと思う。ぼくにとってはそういうバンドだし、ずっと応援していきたいなあ。

でもさ、マイク、Fort Minorもっかいやってくれない?ゴリゴリのマイクのラップが聴きたいからさ。

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「にわか」には何が足りないか

YouTubeのコメント欄でよく見る「にわか」という言説。これまでは「あーあー、最近ハマったばっかりで知らないだけなのに、かわいそうに」といったスタンスでそれを見ていたんですが、身近にそれがわくと話は別。うざいしダサい。

 

例えば、留学先で日本人にあった時に「MCバトル見るの好きなんですよ!」と言われた。向こうはぼくがヒップホップが好きだという情報を聴いて好意的な意味でこれを言ってきたのだろう。ぼくとしてもなかなかヒップ・ホップ、MCバトルについて話ができる人間が周りにいなかったものだから、「まじで?うれしい」と思って話をした。高校生ラップ選手権の話、チプルソの話、GOLBYの話・・・最初は盛り上がった。

でも話の端々から、僕ほどはまっている歴も長くなく、ぼくよりは詳しくはないんだろうなという雰囲気は感じ取っていた(こうして出会った人間をすぐ自分より上か下で選別してしまうのが文化系マウンティング人間の悲しい性である)。そしてぼくはバトルビートをしようと、「RHYMESTERのさあ!」と切り出した。そしたら彼は「RHYMESTER?誰ですかそれ?」と言い放ちやがった。RHYMESTERという日本のヒップホップ界のレジェンドを知らないことは5億歩譲って許すとしても、その場で彼らの音楽に興味を持ってくれたならぼくも許す気になっただろう。そしてぼくが彼らの音楽がきっかけでヒップ・ホップによりのめりこむことになったのと同じように、彼にもぼくと同じ道を歩んでほしいという親にも似た慈悲深さで彼をやさしく包み込むこともできたはずだ。でも彼は続けた。「曲は聴かないっすね、興味ないんで」―はい、会話終了。その後は一度も口をききませんでした。

 

彼は、あらゆる文化を愛するうえで重要な三つの視点を欠いている。

 

①目の前の作品に真剣に向き合う

②作品の置かれた文脈に興味を持つ

③そこから着想を得て常に新しいものを探求する

わかりやすく彼を例にとっていうと、①の視点は彼も持っている(MCバトルを「作品」とするのであれば、だが)。十分すぎるくらい。そして②の視点を一切持ち合わせていないことになる。MCバトルにおける文脈とは、バトルの歴史、ひいてはMC達の音源作品、ビートに使われる過去の名曲、ひいてはヒップ・ホップそのものの歴史だ。彼はこれらに対して「興味がない」と言い放った。そして③の視点は例えば②で挙げたものに触れた時にさらに興味を持つであろうもの、例えば曲のサンプリングソースや言及されている映画や人物である。彼の場合②を欠いているのだから③にたどり着くわけがない。

このように、たいていの場合あらゆる文化の入り口となりえるようなもの(ヒップ・ホップで言うところのMCバトル、ロックで言うところのロキノン系)には②へのヒントがたくさんあるし、そしたら③の視点を持つのは自然な流れだ。

 

なぜ「にわか」が批判されるのか、それは①だけで立ち止まってしまうからだ。そこだけで十分楽しめると勘違いしてしまうからだ。だけど①は当たり前だけどずっといるような場所ではないわけで、そのうち当人は飽きてしまって、それ以前の段階、ゼロへと戻ってしまう。それって超もったいないし、なによりもダサくない?

②までせめて行ければ、「深く狭く」というスペシャリストになれる。③まで行ったら「深く広く」という最強の人間になれる。

もちろん②や③の段階まで行くのは大変だし、多くの時間やエネルギーを費やすこと。でもそれこそ尊いことだ、かっこいいことだという考えが世の中で共有されてないことが非常に歯がゆい。①のレベルにとどまってる自称「文化系」人間のいかに多いことか。我々のような人種は「オタク」だとか「ナード」というレッテルを張られておしまい。そして①のような人間が幅を利かしてイキったりするようになる(残念ながらそれがマジョリティだから)。世の中のおしまいですねこれは。

視野は広い方が絶対にいい。好奇心は絶やしてはいけない。ダサい人間にならないためには。